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第3話
「これで、とどめ!」
その姿からは信じられないほどの力で熊の魔物の首を一刀両断する。
血しぶきをあげ熊は大地に落ちる。倒れた衝撃で足下が揺れる、それはこの森の勇敢な戦士の最後だがさきえもんの表情は物足りなさを示していた。
もう何匹目かも数えるのも面倒になって来た熊の魔物に最初ほどの緊張は見られない。
しかし、次から次へと倒しても一向に強敵は現れない。多分縄張りがあるせいだろうとさきえもんは考えている。
「もっと!もっと強い魔物はいないの!?」
さきえもんは散々叫ぶが状況は変わらない。次のフロアにつながる道が見つからないからである。
「いらつくのはわかるが落ち着け」
「そうだぜ、そんなんだからおこちゃまなんだぜ」
まんじゅうとこんぺいとうに諭されるがわかっているが納得がいかないさきえもんだった。
そんな日が何日も続いたがついに変化が起きた。
「道を空けろ!重傷人だ!」
大通りに響く声の方に目を向ければ10人前後の冒険者が運ばれてきている。
遠目で見ている通行人が話しているのを聞いてみるとどうやら第二階層が見つかったがそこにいるモンスターにやられたらしい。
今までとは違う大物の情報を手に入れたさきえもんは早速仲間のもとへと向かった。
ブリックス船内にある会議室にはすでにメンバーが集まっていた。
「さて、皆さんおそろいですかね」 団長が全員集まってるのを確認して今回の事件について話し始めた。
「ついに第二階層が見つかりました。そして見つけた冒険者達は先ほど戻ってきましたがかなりの重傷のようですね」
一呼吸つけ団長は続ける。
「さて、そのような状況ですが私たちも第二階層に行きますか?」
「と、言っても誰も反対しなさそうですね」
団長は肩をすくめ机に一枚の地図を置いた。
「これが今回の探索で目指す第二階層までの地図です」
さきえもんも他の団員に続いて地図を見るが覚えようとはしない。
完全にリーダーであるまんじゅうに頼っている。ただ突っ込むのみとさきえもんはひとりこぶしを握りまだ見ぬ敵に闘志を燃やしている。
「肝心の先行した冒険者達がやられた魔物はなんでしたの?」
ゆったりとした声が会議室に広がる。声の主であるけーきは相も変わらずおっとりした雰囲気で団長に尋ねる。
「敵は赤毛の熊型の魔物とのことです。気をつけてください」
けーきの他には特に質問もなく早速第二階層を目指すことになった。